「映画はいつも『眺めのいい部屋』」村田晃嗣著
かつてハリウッドはロナルド・レーガンという元B級俳優をホワイトハウスに送り込んだが、ハリウッドとホワイトハウスの関係は1898年の米西戦争にまで遡る。
戦争の様子はニュース映画として多くのアメリカ人に届けられ、活字とは比較にならないインパクトを与えた。その結果、国民的英雄となったのがルーズベルト大統領だ。以後、いかなる大統領も映像の中での自分のイメージを無視して、その職を遂行することができなくなったのだという。
やがてフィクション映画の中でも実在、架空の大統領が描かれるようになる。映画が実在に先行したのは「ザ・マン」「ディープ・インパクト」で演じられた黒人大統領。しかし黒人大統領はSF作品に登場することが多く、非現実性のアイコンであったという。
新旧の映画を織り交ぜながら、権力と反権力の関係、家族、宗教、スポーツまで日米の映画を手がかりに国際政治学者による世界を見通す映画エッセー。
ほかにも「映画の中の不治の病」をテーマにしたものや、「ジョーズ」に影響を与えたのは「白鯨」、怪獣「ゴジラ」はゴリラとクジラの合成語などトリビアも満載で、映画の楽しさ、奥深さが伝わってくる。
(ミネルヴァ書房 3080円)