「はやぶさと日本人」永山悦子著
人類で初めて小惑星の物質を持ち帰った探査機「はやぶさ」の帰還から4年。2014年12月、後継機「はやぶさ2」が、鹿児島県種子島からH2Aロケット26号機で打ち上げられた。目的地は地球と火星の間にある小惑星「リュウグウ」。その砂や石を持ち帰ることが目的だった。
2020年に52億キロの旅を経て、採取したカプセルが無事に地球に届けられると、関係者たちは歓喜に沸いた。はたからは、順風満帆に進んだように見えるプロジェクトだが、その陰には数々の試練があった。
JAXA内で正式にプロジェクトと認められるまでの駆け引き、民主党政権下での事業仕分けと東日本大震災の関係で暗雲が垂れ込めた予算。それでもチームリーダーは諦めず、国民にメッセージを発信し、政治家や霞が関に手紙を送るように求めた。次の世代が我が国が創造できる国であることを信じられるために、との一念だったという。
その名称から2番機との誤解を持たれるが、実は本番機だった「はやぶさ2」のプロジェクトの始まりから幕が下りるまでを伴走した科学記者が、知られざるドラマをつづる。
(毎日新聞出版 1980円)