「はやぶさと日本人」永山悦子著

公開日: 更新日:

 人類で初めて小惑星の物質を持ち帰った探査機「はやぶさ」の帰還から4年。2014年12月、後継機「はやぶさ2」が、鹿児島県種子島からH2Aロケット26号機で打ち上げられた。目的地は地球と火星の間にある小惑星「リュウグウ」。その砂や石を持ち帰ることが目的だった。

 2020年に52億キロの旅を経て、採取したカプセルが無事に地球に届けられると、関係者たちは歓喜に沸いた。はたからは、順風満帆に進んだように見えるプロジェクトだが、その陰には数々の試練があった。

 JAXA内で正式にプロジェクトと認められるまでの駆け引き、民主党政権下での事業仕分けと東日本大震災の関係で暗雲が垂れ込めた予算。それでもチームリーダーは諦めず、国民にメッセージを発信し、政治家や霞が関に手紙を送るように求めた。次の世代が我が国が創造できる国であることを信じられるために、との一念だったという。

 その名称から2番機との誤解を持たれるが、実は本番機だった「はやぶさ2」のプロジェクトの始まりから幕が下りるまでを伴走した科学記者が、知られざるドラマをつづる。

(毎日新聞出版 1980円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…