「空芯手帳」八木詠美著
「空芯手帳」八木詠美著
紙管製造会社で働く柴田は4日前に妊娠した。その日、打ち合わせ室に放置されたコーヒーカップを片づけるよう上司の無言の圧力を感じ、思わず、妊娠しているからコーヒーのにおいがダメなのだと言ってしまったのだ。
もともと所属する部署は自分以外は全て男性で、コーヒーカップのほかにもコピー用紙の補充など、名前がない仕事をすべて押し付けられていることへの憤りが蓄積していたのだ。人事課には明年5月出産予定と報告。以来、残業はなくなり、いいことずくめだ。
同僚たちは、未婚の柴田にどう接すればいいのか戸惑っているようだ。ただ隣席の東中野だけは赤ちゃんの性別など何かとたずねてくる。
柴田の妊娠5週目から「出産」までの奇妙な妊娠生活をつづった注目の新人のデビュー作。 (筑摩書房 726円)