「BOOKSのんべえ」木村衣有子著
「BOOKSのんべえ」木村衣有子著
絲山秋子の「下戸の超然」を読むと、のんべえと下戸の間に流れる川は深いと分かる。
北九州生まれの鳴海広生は、筑豊出身の力士、益荒雄広生にあやかって名づけられたが、体格も性格もその名にふさわしくない。彼女と食事に行くと、遠慮せずに酒を飲む彼女に「ずれ」を意識しはじめる。酒が言わせる言葉、酒がさせる所業と思っても、そこにはその人の個性が宿っている。彼女は「せっかくリラックスしているのに」と言うが、鳴海にはだらしないとしか思えない。(「下戸とのんべえの間」)
ほかに「吾輩は猫である」が書かれた時代には、ビールは新しい飲み物だったので、扱いが冷たいなど、日本文学と酒について考察したエッセー。
(文藝春秋 1650円)