「客観性の落とし穴」村上靖彦著
「客観性の落とし穴」村上靖彦著
現代社会は、客観性や数値的エビデンスを真理とみなし、最重視する。また、障害者などの社会的に弱い立場に追いやられた人への厳しい視線も遍在する。無関係とも思えるこのふたつの傾向には、数字によって支配された世界の中で人間が序列化されるという共通の根っこがあると著者は指摘する。
現代人の多くは、客観的な事象こそが真理であるという発想を共有しているが、そもそも客観性が支配する世界はたかだか200年の歴史しかないという。
本書は、客観性という発想や、真理が数値で表されると考えられるようになった歴史を振り返り、序列と競争が社会のルールになっていく経緯を追う。その上で、客観性と数値化への過剰な信仰から解放された社会の可能性を探る。
(筑摩書房 880円)