犯人と勘違いされ…大地康雄“悪役顔で逮捕”の苦い思い出
形勢逆転したのは87年に公開された伊丹十三監督の「マルサの女」。私は国税局査察官の宮本信子さん演じる主人公の同僚役です。ガサ入れの時に大活躍する正義の味方でした。今度はひとりで飲んでいると社長然とした人がすり寄ってきて「いい節税法はありませんか」と高い酒をごちそうしてくれる。驚いたねえ。役柄によってこんなに見た人の態度が違うものかと(笑い)。
しかも「マルサ」以降は悪役以外で、どんどんオファーが来た。仕事の幅も広がり、途端に酒がおいしくなりました。3人で3升空けて記憶をなくしてしまったこともありましたが、仕事が順調だと酒が本当に楽しいものですよ。
ここ5年ほどは宮城の「浦霞」、なかでも純米吟醸酒「禅」をよく飲んでます。初めて味わったのは、絵本の読み聞かせを町ぐるみで行っている北海道剣淵町を舞台に私が企画・主演した映画「じんじん」のロケ中です。主人公・立石銀三郎は酒好きの大道芸人。ストーリーの中で宮城県松島町が登場し、隣町・塩釜市の「浦霞」を飲むシーンがあるんです。
実際一口飲んだら、これがまた本当においしい。すっかりファンになってしまい、映画にもそれ以来、ずっと協力していただいています。この作品でイマジンインディア国際映画祭マドリード最優秀主演男優賞とゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013・人物賞をそれぞれ受賞しているんです。
公開中の第2弾「じんじん~其の二~」は神奈川県秦野市が舞台。やはり「禅」は欠かせませんでしたし、地元の「笹の露」もおいしくて、劇中で使わせていただきました。ロケ中、打ち上げ、上映後の懇親会……。この作品で「禅」と「笹の露」が果たした役割は大きいんですよ。