症状ないが危険の一歩前 「前脱水」対策が熱中症回避のカギ
前脱水は、脱水症の前段階のことだ。
「脱水症のような症状がないけれど、体液量が減少している状態を指します。脱水症では体液の3%以上が失われるので症状が出やすいですが、前脱水は体液量が減ったといっても1~2%程度で、症状が出にくい。いわば脱水症と正常の境界域なので気がつきにくいのです。しかし、これは脱水症を発症する直前の体の警告だと考えた方がいいのです」(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科・谷口英喜教授)
前脱水のチェック項目は、高齢者、成人、幼児・小児で違う。
「成人は自分で体調管理ができるのでいいのですが、高齢者や幼児・小児は自覚症状がありません。周囲がチェックするようにしてください」
前脱水だと感じたら、体内で不足している水分と電解質を効率よく補える経口補水液を飲む。経口補水液は市販されているが、自分でも作れる。1リットルの水に3グラムの食塩と40グラムの砂糖を入れればOKだ。柑橘系の果汁を入れると飲みやすくなる。
「健康な時は水やお茶で水分補給をしても問題ありませんが、前脱水の時は体内で水と電解質が同時に減少しているので、ここに水分だけを補給すると、体液が薄まります。すると、体液の濃さを元に戻そうと体が働き、飲んだ水が尿として排出され、かえって脱水症が進行します」