著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

「バイリンガル」は脳梗塞後のダメージが少ないって本当?

公開日: 更新日:

「バイリンガル」とは2つの言語を自由に操ることのできるスキルです。2つの言語を理解する脳の認知機能は、1つの言語のみを理解する機能よりも優れているようにも思えます。

 認知機能が低下する原因としてアルツハイマー型認知症は有名ですが、脳の血管が何らかの原因で詰まって脳梗塞を起こしてしまうと、脳細胞の一部が破壊されて認知機能が低下することがあります。これを脳血管性認知症と呼びます。

 バイリンガルの人は、「脳梗塞を起こしても認知機能のダメージが少ない可能性がある」との研究があります。脳血管疾患領域では世界的に有名な米国の医学誌「ストローク誌」(2015年11月電子版)に掲載された研究論文がそれです。

 この研究では、脳梗塞を起こした608人(平均56.8歳、男性77%)が対象となりました。研究対象者から、「バイリンガルの人」(353人)と、1つの言語のみを理解する「モノリンガルの人」(255人)を比較し、脳梗塞後の認知機能レベルを調査しました。

 その結果、認知機能を通常レベルで保っていたのは、バイリンガルの人で40.5%、モノリンガルの人では19.6%と、バイリンガルの人の方が認知機能の維持が統計的にも有意に多く保たれていました。また認知機能低下については、バイリンガルの人で49.0%、モノリンガルの人で77.7%と、モノリンガルの人で統計的有意に認知機能が低下していました。ただし、失語症については明確な差はありませんでした。

 操れる言語の種類によって、どのように認知機能保護効果が得られるかについては不明な部分もあり、すべてのバイリンガルの人にこの結果が当てはまるかどうかは分かりません。しかし、興味深い話です。

【連載】役に立つオモシロ医学論文

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