作家・村野正好さん 乳がんで「なぜ男性が?」の重圧感じ
どうであれ、青天の霹靂。ステージⅢの終わりかⅣと言われた時点で、余命を告げられたも同然でした。でもその傍らで、「乳がん」という主治医の言葉を聞いて、なぜか20年ほど前にちょっとした遊び心から、自分の胸にチョコレートケーキを塗られたことを思い出しました。「乳がんになっちゃうかもー!」なんてふざけて言った自分の言葉がよみがえったのです(笑い)。
思えば、人生にリスクはつきもの。命の危険を伴うようなスポーツや遊びを楽しんできたので「乳がんも仕方ないか」と思いましたよ。世間はとかくリスクを避けることばかり考えますけど、私はベネフィット(成果)を確実に得るためには、リスクはテークするものだと考えています。がんは私に課せられたリスクのひとつ。まあ、男性にしては珍しすぎる病気ですが……。
右胸に太ももから切り取った皮膚を貼りつけてはや6年目になりました。実は昨年、手術から5年経過のいわば“卒業検査”で左胸に腫瘍が見つかり、9月から女性ホルモンの投与が始まりました。腫瘍が大きくならないように抑える乳がん治療だそうです。転移は怖いと思っていましたが、なってみると当たり前のことのよう。「ついに来たな」くらいな気持ちです。