末期がんの治療の「平均的効果」と「個別効果」
これまで取り上げてきた末期のがん患者に対する治療の効果についてまとめてみると、以下のようになります。
●年間の薬剤費が数千万円に達するような抗がん剤は、末期のがん患者の生存期間を平均3カ月くらい延長する効果がある。
●200人に数人は、がんが治ってしまう可能性もある。
●早期の緩和ケア導入は、生活レベルを改善するばかりでなく、寿命を縮めるというよりむしろ延長するかもしれない。
●終末期の酸素投与は、チューブにつながれる不都合を上回るような効果を期待することは困難かもしれない。
●終末期の点滴も効果がはっきりしないばかりか、浮腫や腹水を増やすだけかもしれない。
●副作用の点でしばしば敬遠されるモルヒネやステロイドホルモンは、副作用に注意すれば害を上回る効果が期待できる場合が多い。
こうした現状を考慮すると、末期がんにお勧めできるのは、まず副作用に注意しながらモルヒネ、ステロイドの投与です。その場のつらい症状をコントロールすることで、抗がん剤や点滴や酸素は状況に応じて個別に考慮する――というところです。