腫瘍マーカーはがんそのものの状態を表すわけではない
しかし、腫瘍マーカーの値が、がんの大きさをそのまま表すわけではありません。ですから、腫瘍マーカーが下がるのはいいのですが、どのくらい小さくなったか、消えたか、あるいは大きくなったかはCT画像などで判断します。腫瘍マーカーはあくまで指標であって、がんそのものの存在は、画像ではっきりさせるのです。
がん性腹膜炎では、CT画像ではその効果の判断が難しいこともあります。胃がんの手術を受けた後、がん性腹膜炎を起こしたCさん(42歳・男性)は、時々、腹痛があり、腫瘍マーカーが次第に上がってきました。しかし、CT画像は前回と変化がなかったため、主治医は「いまの抗がん剤は効かなくなってきたようです」と薬を変更しました。その後、腫瘍マーカーは低下し、腹痛などの症状が消失したことで、Cさんは「あの時に抗がん剤を替えて、本当に良かった」と、主治医と共に喜び合いました。
抗がん剤治療の効果の判定はあくまで画像で行いますが、腫瘍マーカー値を効果の指標にしている場合は、患者さんは腫瘍マーカー値に一喜一憂して過ごされます。結果が良ければ、Cさんのように担当医と共に喜べますが、悪い結果になってしまう場合もあります。 しかし、たとえそうであっても、患者さんは、医療者からの「一緒に頑張りましょう」「これからのことを一緒に考えましょう」といった言葉と、共に闘っている態度が欲しいと考えます。医療者として、忘れてはいけないことだと思っています。