再手術を考えて「癒着」が少なくなるように終わらせる
一方、ヘタな手術というのは患部が荒れていますし、一貫性がありません。何人もの医師が手術に加わり、まちまちなやり方をしている印象を受けます。たとえば、心膜を閉じるときにゴアテックスという人工心膜を使っている箇所もあれば、使っていない部分があったり、切開した右側と左側がまったく違う閉じ方になっているケースもあります。人工心膜も、上手な外科医が使うと癒着剥離がスムーズにできます。しかし、ヘタな人が使った場合は人工心膜そのものが臓器と癒着してしまうことが多いのです。
中には、とんでもない事例があります。かつて大学病院で心臓手術を受けた男性患者さんが再手術のために来院されました。術前のCT検査をしてみると、小さな川エビのような影が写っています。「なんだろう?」と思いながら手術を行ってみると、その正体は小さなプラスチック製の鉗子でした。
前回の手術で取り出し忘れたのでしょう。プラスチック製だから体に“悪さ”をしなかったのですが、これが金属製だったら危険だったかもしれません。術後、患者さんにそのことを伝えると、激高されていました。それも当然でしょう。