高血圧、花粉症、うつ病… 持病のクスリが虫歯を招く
男性の体の老化の順番は、俗に「ハ・マラ・メ」という。マラ(下半身)が先かメ(目)が先かは議論が分かれるところだが、ハ(歯)の喪失が老化の始まりであることは間違いない。実際、厚労省の「平成28年歯科疾患実態調査」によると、50歳以上の6割以上が歯を失っており、その数は60歳以上で4本以上。歯周病と並び、その多くは虫歯が原因だ。
虫歯は虫歯菌が口腔内の糖分を分解したときに産出する酸が歯の表面を溶かすことで発症する。これを防ぐには食事後の歯のブラッシングで食べかすを口腔内に残さないようにするだけではダメで、口腔内を中和できる唾液の質と量を維持することが必要となる。自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長が言う。
「唾液は食物ののみ込み、口腔内の抗菌、口腔粘膜の保護などのほかに、虫歯菌が産出する酸の中和と酸に溶かされた歯の表面の再石灰化の役割があります。若い頃と同じように歯を磨いているのに年を取ると虫歯が増えるのは、その唾液の質と量が変わるからです。その原因となるのが、歯が悪くなって十分噛まなくなることのほか、自己免疫疾患のシェーグレン症候群といった唾液腺の病気やおしっこが大量に出ることによって、口の中も乾く糖尿病、腎臓病などの病気があります。口呼吸による水分の蒸発にも注意が必要です。利尿作用のあるお酒も口の中を乾かします。また、意外に気づきにくいのが高血圧、花粉症、うつ病、アレルギーの薬や一部の風邪薬などです」