10分で1リットル処理 「難治性腹水」世界初の効果的治療法
国内では難治性腹水の治療法として、1981年に「腹水ろ過濃縮再静注法(CART)」が認可(保険適用)されている。患者から抜いた腹水をろ過器によってがん細胞や細菌、血球、フィブリンなどを除去し、次に濃縮器で余分な水分や電解質を取り除き、アルブミンなどの有用な物質の濃縮液を作る。それを点滴静注で患者へ戻すという治療法だ。
ところが欠点が多い。回路と操作が複雑。がん性腹水では細胞や粘液成分が多く、2~3リットルでろ過膜が詰まって処理できない。ローラーポンプでしごいて無理やりろ過するので、過度な刺激がかかり炎症物質が増加してしまい、濃縮液を患者に戻すと高熱が出る。これらの理由から、90年ごろには「CARTはがん性腹水には使えない」と評価されてしまったという。
■大量に腹水が抜けると見違えるほど元気に
このCARTのシステムを改良し、問題点を解消させたのがKM―CART。以前の心臓外科時代に「体外循環とろ過膜」を研究していたからこそ実現できたという。