映画の糖尿病患者は事実とかけ離れた頓珍漢なものばかり
前から気になっていることを、ここでひとつ話しておこう。インスリンを使用している糖尿病患者が、映画などのフィクション作品でどう描かれているかである。
本物の患者から見れば、的確に描かれていたためしがないと言ってもいいほど、それはしばしば誤解に満ちた描写になっている。
たぶん、糖尿病患者は「インスリンがないと困る」「意識を失うことがある」という生半可な知識だけに基づいて描いているのだろう。メカニズムまで理解しているわけではないので、頓珍漢(とんちんかん)な描写になってしまうのだ。
あえて作品名は掲げないが、典型的な例として、ある近未来物のアクション映画で描かれていた場面はこうである。
外部との連絡が途絶えた閉鎖的な状況で、糖尿病患者である一人の少女が、インスリンを切らしてしまったためにぐったりしている。見かねた子供たちが、乏しい食料の中から彼女にチョコレートを差し出すと、彼女は「ありがとう」とかすかにほほ笑んで、力なくそれを口に含む。