医師同士が気軽に相談できる環境が質の高い医療につながる
■それでも「良医」にお願いしてしまう
ある時、白血病の患者が夕方になって鼻出血があり、担当医が処置しても止血しにくいことがありました。担当医は耳鼻科のS医師に診察をお願いしました。
耳鼻科の医師の中で緊急時の当番が決まっている場合、当然、当番の医師にお願いします。しかし、その当時は当番制がありませんでした。それで担当医は、時間外でも嫌な顔をせずにすぐに診てくれる親切なS医師に依頼したのです。もちろん、耳鼻科の他の医師の技術や腕にはまったく問題はないのですが、気軽に依頼できることからS医師に頼んだようでした。
「困った時のS先生、きっと、なんとかしてくれる」
S医師はすぐに飛んできてくれました。
担当医は、S医師は他の診療科からの依頼も多くなっていてとても気の毒と思ったようですが、それでも出血している目の前の患者を見ると、S医師にお願いすることを選択したといいます。
昔のように入院日数が長かった時代よりも、今は1人の医師がたくさんの患者を診察しなければならなくなった事情もあって、依頼されたS医師は長時間勤務が続くことになります。このような良医は、その家族が犠牲になっている場合が少なくない点も気になります。