頭木弘樹さんは潰瘍性大腸炎で13年間入退院を繰り返し…
難病だと聞かされた時は「もう死ぬんだ」と思いました。でも、「今はもうこの病気そのもので死ぬことは少ない」と言われて、すごくうれしかったことを覚えています。ただ、「一生治らない。就職も進学も無理」と言われました。
それから13年間、入退院を繰り返しました。主な治療は「プレドニン」という免疫を下げる薬の投与だったので、ひたすら人混みを避ける生活でした。まるで今のコロナ禍のような自粛生活が、僕にとっては普通の生活として何十年も続いています。抵抗力がないので水痘(水ぼうそう)になったり、副作用で視野がゆがんだり、骨粗しょう症になったり、いろんな病気になりました。発症から13年後には、副作用の強いプレドニンの量を減らすために手術をして、多少外出できるようになりましたが、今でも電車の中でゴホンと咳をされただけで怖いんですよ。僕のように免疫を抑える薬を飲んでいると、風邪をもらったら風邪だけじゃ済まないので……。
■カフカを読み返して絶望感に共感
就職も進学も「無理」と言われた絶望的な入院生活で活路を見いだせたのは、中学生の時に読書感想文のためにいやいや読んだカフカの「変身」を思い出したことです。ある日、目覚めたら虫になっていた主人公がまるで自分のように思えたんです。