上限を超えればそれ以上治療費がかからない「在がん制度」
患者さんの自己負担はそれぞれの所得レベルに応じて違いますが、入院するよりも上限額が低く決められているのが特徴といえるでしょう。
以前こんな患者さんがいらっしゃいました。
その方は60代後半の胆管がん末期の男性患者さんで、3度の結婚を経験。1回目の結婚で長女と長男、再婚で次男、次女、三女と、お子さんは全員で5人。さらにお孫さんは7人いました。
入院先から余命1カ月と告知を受け、在宅医療に切り替えることになった当初、ご本人は「自由に家で過ごしたいが、在宅医療費が高額になるのでは」とためらっておられました。
ですが医師が丁寧に説明し、医師や訪問看護が何回入っても、その上限以上は治療費がかからない「在がん制度」があることを説明し、納得の上でようやく在宅医療スタートとなりました。
入院中は自分の好き嫌いをはっきりと口にする性格から、病棟では看護師さんとよくもめていたそうですが、やはり自宅での居心地がよかったのか、私たちスタッフには常に穏やかに接してくれ、時に笑顔も見られていました。そして退院から1カ月あまり、患者さんはお子さんやお孫さんに見守られながら眠るように亡くなられました。