政府が早期対応を呼び掛けている「医療DX」ってなんだ?
いま多くの企業で「DX」の導入が進んでいる。DXとはデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の略語で、政府は早期の対応を呼び掛けている。既存システムの老朽化やIT人材不足などにより、2025年までにシステム刷新を行わないと年間最大12兆円の損失が出続けると試算しているためだ。政府の意向には、一般企業だけでなく医療機関も含まれている。「医療DX」は患者にとってプラスになるのか。岡山大学病院・薬剤部・人工知能応用メディカルイノベーション創造部門教授の神崎浩孝氏に聞いた。
経産省のDX推進ガイドラインでは、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている。単なるデジタル化やIT化ではなく、それをベースにした企業経営における競争の戦略という位置づけだ。
医療機関では、競争の優位性を確保するというよりは、データとデジタル技術の活用により診察や治療といった業務の生産性や正確性をアップさせ、よりよい医療を患者に提供することで地域で求められている役割を果たし続けるためのものといえる。では、患者にとってどんなメリットがあるのか。