「パワハラ」はずっと残り続ける恐怖を相手に植え付ける
1920年代に行われた、心理学者のワトソンとレイナーによる「アルバート坊やの実験」という有名な心理学の実験があります。アルバートとは、被験者である乳児の名前です。
大前提として乳児は、大きい音に対して恐怖心を抱きます。大人でも、突然大きな音を鳴らされるとびっくりするわけですから、乳児や子供の恐怖は想像に難くありません。
大きな音を出すと乳児(アルバート坊や)は恐怖心を抱く。この反応を利用し、ワトソンたちは、「白ネズミを見せてから、ハンマーで叩いた大きな音を鳴らす」というアクションを繰り返しました。その結果、アルバート坊やは白ネズミを見るだけで怖がり、泣き出してしまうようになってしまいました。白ネズミ=大きな音が鳴ると思い込み、アルバート坊やは白ネズミを反射的に怖がるようになってしまったのです。
乳児の人権を無視しているため、この実験は大きな非難を受けました。一方で、「条件付け」を用いれば、人間に恐怖反応を起こせることを実証したのです。
先のパワハラの例を思い出してください。パワハラをやめても、パワハラを行っていたAさんを見るだけで、被害者は精神的なダメージを被り続けてしまうのです。発達の形成において、環境は極めて重要な要因となります。