訪問診療をキャンセルされることもたびたび…誰とも話したがらない63歳男性
「痛い、何やってんだよ」(患者)
「調子はいかがですか?」(私)
「悪いに決まってんだろ」(患者)
「血圧測ってもいいですか?」(私)
「嫌だって言ってるでしょ!」(患者)
お別れが近づいている時、身近な人に弱っている姿を見せたくない、心配をかけたくないと、診療を拒否し、家族を近づけない患者さんがいます。その患者さんは、糖尿病の3大合併症とも言われる糖尿病腎症、そして急性化膿性骨髄炎を患う63歳の男性。急性化膿性骨髄炎は、骨髄の中に黄色ブドウ球菌などが入り込むことで炎症が起こる病気です。足が壊死し切断すべきとなったが拒否され、足のケアができる当院へ相談が寄せられたのでした。
入院していた病院から引き継いだ情報によると壊死している足を切断した方が生存率は上がると説明済み。しかし本人が頑として首を縦に振らないとのこと。急変時の心肺蘇生も希望していないと書かれていました。
退院後しばらくは、患者さんは透析のために別のクリニックに通い、当院では足のケアや疼痛(とうつう)コントロールを担当。ところが状態が悪くなるにつれ、透析のクリニックに通えなくなり、痛みを取り除く治療がメインとなったのでした。ですが診察に伺っても冒頭のように終始不機嫌で、コミュニケーションが成り立つ状況ではありません。だれとも話したがらず、痛みがひどいからと診察をキャンセルされることもたびたびありました。