「脂質異常症」の新たな標準薬…スタチン代わる「ベムペド酸」とは?
■筋肉への負担が少なく不耐患者に朗報
ベムペド酸は、スタチンとは異なるメカニズムでコレステロールの合成を抑える。スタチンが肝臓だけでなく筋肉細胞内でも作用するのに対し、ベムペド酸は主に肝臓で活性化される。そのため、筋肉に対する影響が少なく、スタチン不耐の患者にも使用できると考えられてきた。
2023年3月、ベムペド酸の有効性と安全性を検証した大規模臨床試験の結果が、世界的にも有名な医学雑誌「New England Journal of Medicine」に発表された。スタチン不耐の患者約1.4万人が被験者だった。
「被験者は、ベムペド酸を投与する群と、プラセボを投与する群にランダムに振り分けられ、心臓病の発症率が比較されました。中央値で40.6カ月にわたる追跡調査の結果、心臓病の発症はベムペド酸を投与した群で11.7%、プラセボを投与した群で13.3%と、ベムペド酸を投与した群で統計学的にも有意なリスク低下を認めました。また、2つの群で重大な副作用の発生率に差を認めませんでした。ただし、ベムペド酸を投与した群では、痛風や胆石の発生率が高くなる傾向性を認めました。それでもこの研究結果は、ベムペド酸がスタチン不耐の患者さんにとって新たな治療選択肢となる可能性を示しています。特に、スタチンを使用できない、あるいは十分な効果が得られない患者さんにとって、大きな希望となるかもしれません」
一方で、同薬の安全性に関するデータは限られており、今後の課題と言えると青島氏は言う。
なお、ベムペド酸は日本において、大塚製薬株式会社が研究開発を進めていて、2024年の後半に製造販売承認の申請を予定している。