紅麹サプリ被害で報告されたファンコーニ症候群は早期発見が重要
小林製薬の「紅麹の成分を含むサプリメント」を摂取した人が健康被害を訴えた問題で、厚生労働省は「青カビが混入して作られたとみられる『プベルル酸』が原因物質だとほぼ確定した」とする調査結果を公表しました。プベルル酸は紅麹の培養段階で、青カビがドラムに混入して作られたと推定されています。
大阪市の調査では、健康被害者の72%が女性で、最も多い主訴は倦怠感とされています。今回の健康被害では、腎機能障害が主に報告されていますが、日本腎臓学会の調査では、その中でも特に「Fanconi(ファンコーニ)症候群」を疑う所見が目立っているとの報告がありました。
ファンコーニ症候群は、腎臓のなかでも特に近位尿細管の障害により、本来近位尿細管で再吸収されるはずのアミノ酸、ブドウ糖、重炭酸、無機リンなどの物質が尿中へ喪失することにより、代謝性アシドーシスや電解質異常、脱水、発達障害、くる病などを起こします。
先天性のものと後天性のものがあり、後天性の場合、多発性骨髄腫やシェーグレン症候群などに伴い起こることもありますが、今回の健康被害と同様に化学物質により生じるケースも知られています。とくに有名なのは、カドミウムによるイタイイタイ病です。イタイイタイ病では、長期にわたる腎機能障害により、骨を作るために必要な栄養素が流出して骨が非常にもろくなり、容易に骨折することで全身が激しく痛むといった症状が見られました。
薬剤が原因のファンコーニ症候群は、その薬剤の中止により多くが軽快するということも知られています。ですから、早期発見がとても大切なのです。