過労死を防ぐには「衝動」を見逃してはいけない…隠れ疲労に注意
過労死や長時間労働の問題を解消するため、2021年にいわゆる「過労死ライン」が見直された。今年の4月1日からは、医師、運送業、建設業の3業種で、時間外労働の上限規制が始まり、「2024年問題」として議論が続いている。働く人の命や健康を守るために労働環境の改善は重要な課題といえるが、一方で、「疲労」を見逃さないことも大切だ。「東京疲労・睡眠クリニック」院長の梶本修身氏に聞いた。
われわれが「疲れた」と感じるのはエネルギーを消費して体が疲弊したからではなく、脳の中にある自律神経の中枢に大きな負担がかかったからだという。
「自律神経は、体温、血圧、呼吸、心拍数、睡眠、摂食など、人間が生命を維持するために必要なあらゆる身体活動をコントロールしています。仕事や運動によってその自律神経が酷使されると、脳の細胞で活性酸素が発生し、酸化ストレスの影響で本来の自律神経の機能を果たせなくなってしまいます。これが、脳で疲労が生じている状態=脳疲労です。『自律神経が疲れた』という情報が脳の眼窩前頭野に送られると、そこで『体が疲れた』という情報に書き換えられ、体全体の『疲労感』を自覚するようになります」