依存症の人が見えている世界(1)いつの間にか主従が入れ替わっている
今年4月、米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の銀行口座から賭け屋へ不正に送金したとして訴追された水原一平被告。彼がギャンブル依存症と告白したことから、依存症に関するニュースも複数報じられたが、「依存症の人が見ている世界を理解しなければ、依存症には寄り添えない」と語るのは、ライフサポートクリニックの山下悠毅院長。「薬だけに頼らない」をモットーに認知行動療法や運動療法も活用する、依存症のスペシャリストだ。
世界保健機関(WHO)は依存症について「その刺激を追求する行為が第一優先となり、刺激がないと精神的・身体的に不快な症状を引き起こす状態」と定義する。
「例えば、釣りが趣味の人がいて、生活や仕事を放ってまで釣りを優先してしまえば、“釣り依存症”です。依存症は、ギャンブルや薬物といった特定の何かに限定されるものではなく、その人のライフスタイルを変えてしまうものすべてに言えるものです」(山下院長=以下同)
依存症は大きく2つに分けられる。
「ひとつは、たばこやアルコール、薬物といった物質依存症。使用期間と量によって依存が進行していくため、最初は『まずい』と感じていたものが、徐々に『うまい』、そして『欲しい』と変わってきてしまう。もうひとつが、ギャンブルや痴漢、盗撮といった行為依存症です。ビギナーズラックを体験することで本来は無価値なチャレンジが楽しくなり、『またやりたい』と抜け出せなくなり依存してしまう」