(12)細胞のリプログラミングはどこまで進んでいるのか
では、薬以外に老化を克服するためにはどんな手段があるのか? そのひとつとして注目されているのが「細胞のリプログラミング(初期化)」だ。
「私たちの体は、たくさんの機能を持った細胞でできていますが、元は母親のお腹の中にあるたったひとつの細胞です。それが分化して、それぞれの役割を果たす細胞になるのです。例えば、肝臓になる細胞は肝臓としての役割を発揮するために、それに見合った形や、機能できるように分化していきます」(ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師)
通常、細胞は不可逆的で、いったん決まった臓器や細胞に分化した体細胞(体を作っていく細胞のこと。一方で卵子や精子になる生殖細胞は子孫に遺伝子を伝える役割がある)は、他の種類の細胞にはなれない。ひとたび心筋細胞になった細胞は、肝臓や神経の細胞にはなれないのだ。
「細胞のリプログラミングとは、分化により与えられた細胞の形や機能を初期化して未分化の状態に戻し、体を構成するあらゆる種類の細胞に分化できる多能性を持った幹細胞を作り出すことをいいます」