(12)細胞のリプログラミングはどこまで進んでいるのか
「分裂」と「分化」は混同されがちだが、「分裂」は細胞の数を増やすことであり、「分化」は細胞の役割に見合う役割を身に付けていくことをいう。
■iPS細胞の作製過程を省く手法の開発も
細胞のリプログラミングを具体的に言うと「iPS細胞」ということになる。2006年に京大の山中伸弥教授(現京大iPS細胞研究所名誉所長)の研究グループが、マウス由来の体細胞に多様性をつかさどる4つの遺伝子を挿入することで生成に成功した。山中教授はこの画期的な発見により2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。
「同じような万能細胞にES細胞があります。ヒトの皮膚などの体細胞から作り出すiPS細胞は、ヒトの受精卵を破壊して取り出した細胞をもとに万能細胞を作るES細胞に比べて、倫理的懸念がありません。この発見により、必要な臓器や組織に分化誘導して、病気やケガで損なわれた臓器や組織に移植する再生医療や、iPS創薬(患者から生成したiPS細胞を使って病態を再現した疾患モデルを作って効果のある薬剤の開発をすること)などがより現実的になっています」