(3)肺がんの重粒子線・陽子線治療は肺機能低下の高齢者に勧めたい
がん治療において今年の大きな話題のひとつが重粒子線・陽子線による早期肺がん(5センチ以下でリンパ節転移なし)治療の保険適用だ。6月から実施されている。対象はステージⅠ~ⅡAの手術不可の早期肺がん。保険適応の拡大でこれまでなら300万円ほどかかった治療費が高額療養費制度の利用や収入等により10分の1以下になることも。肺がんの患者やその家族にとっては朗報となった。
肺がんは減少傾向にあるとはいえ、2020年に新たに肺がんと診断された人は約12万人、2022年に肺がんで亡くなった人は7.6万人(全がん死のなかで第2位)という怖い病気だ。重粒子線・陽子線治療は長らく先進医療として扱われ肺がんに効果があることは知られていたが、その費用の多さが欠点だった。
そもそも重粒子線・陽子線治療はどんなもので、これまでの放射線治療と何が違うのか?江戸川病院(東京都江戸川区)の黒﨑弘正・放射線科部長が言う。
「放射線治療には、体の外側から照射する(電子線、X線、γ線、中性子線)タイプと、体の内側から照射する(密封小線源治療、非密封放射性同位元素による治療)タイプがあります。重粒子線・陽子線は体の外側から照射するタイプです。その特徴は一般的な放射線治療で使われるX線などよりも切れの良い粒子を使ってがん細胞を強力に破壊することにあります」