家族が認知症を発症したという現実を受け止められない
先日、書籍を紹介するテレビ番組で有吉佐和子さんの小説「恍惚の人」が紹介されていました。
出版時の1972年では珍しい、仕事と家事を両立させている女性が認知症を患った舅(しゅうと)を介護する話で、タイトルが流行語にもなるほどベストセラーになりました。何度もテレビドラマ化されており、内容を知っている人も多いのではないでしょうか。
当時は介護サービスや社会福祉制度も充実していなかった時代。しかし改めて、現代でも通じる介護の課題を浮き彫りにした描写が多いと感じさせられました。
主人公の昭子は銀座の法律事務所で働いており、離れには舅が住んでいます。ある日のこと昭子が離れに行くと舅が「ばあさん(姑)がなかなか起きなくて。まったくばあさんはいつまで寝ているんだ」と言い、昭子はすでに亡くなり冷たくなっている姑を発見します。
夜中にトイレに行きたいからと舅に外から扉を叩かれ、起こされた昭子がトイレに案内しようとするも、間に合わず庭で放尿するなど、本書は認知症が悪化する舅の様子を詳細に描いており、またそれに対する昭子の旦那と息子のそれぞれの様子も印象深く描写されています。