サーモス 片岡有二社長(1)マイボトルブームを牽引する魔法瓶メーカー
サーモスは、ステンレス製魔法瓶の国内トップメーカーである。主力の「真空断熱ケータイマグ」は、魔法瓶を「一家に1本」から「1人に1本」に変えた“マイボトルブーム”の火つけ役となった。
ステンレス製魔法瓶は1978年、サーモスの親会社である日本酸素(現・日本酸素ホールディングス)が世界で初めて製品化した。
酸素・窒素・炭酸ガスなどを運搬するタンクローリーは、マイナス190度前後の極低温を保つために、外槽と内槽の間を真空状態にして断熱性能を維持できるように設計されている。このタンクローリーを小さくすれば魔法瓶になるという発想だったという。
それまでのガラス製魔法瓶は、中瓶が割れやすいという弱点があった。
「私自身、子どもの頃に落として割った記憶がありますし、ガラス製では氷を入れると割れる可能性が高いので、入れることはできませんでした」と、片岡は語る。
しかし、画期的な商品にもかかわらず、ステンレス製魔法瓶は思うようには売れなかった。