夕月 清水淳子社長(5)3.11で冷凍庫が故障 かまぼこ3カ月分の原料すり身がピンチに
地震と相前後して天気は急変。空を黒い雲が覆い、小雪が舞い始めていた。そして震度5前後の余震が続く中、津波情報が流れてきた。
「夕月本社から海岸線までは約3キロありますが、家族のためにも従業員は早く避難させたほうがいい、と判断。帰宅を優先しました」
一方、工場内を確認すると、ラインの一部が壊れ、大型冷凍庫や冷蔵庫に大きな被害があった。
「厄介だったのは、水道が止まってしまったことでした。というのは、原料のすり身、約300トンを保管していた冷凍庫が水冷だったからです。300トンといえば、弊社の主力である『レッド』と『ホワイト』の板付きかまぼこ約3カ月分の生産量に匹敵します。弊社にとっては死活問題でした」
やむなく当時の工場長とボイラー担当者が井戸水をくみ上げて、バケツで冷却用水を供給。人海戦術で何とか冷凍庫を維持できた。
「水道が元に戻ったのは震災から約2カ月後です。地震の揺れで配管がズレてつながらないため、配管を掘り起こしてバイパスをつくる工事が終わってからでした」