執刀100人超の医師が語る「トミー・ジョン手術」のすべて
――リハビリで注意すべきことはありますか?
「リハビリでは患部だけでなく、理学療法士やトレーナーのサポートを受けて体全体の機能が正常かどうかチェックされるべきです。肘を痛める投手は投げる際に、体幹や股関節などを使って体の回転がうまくできていない場合が大半です。股関節を痛めた選手は、ポジションにかかわらず肘も痛めているケースが珍しくありません。再発を防ぐには体をトータルで見直して、少しでも違和感があればケアする習慣をつける必要があります」
――リハビリプログラムが進化すれば復帰は早まりますか。
「靱帯が骨と結合しただけでは、腱がしなやかに機能することはありません。移植した腱が靱帯成分として機能するようになるには最低でも1年はかかると思われます。術中や術後にPRP療法を施して靱帯の生着を早める取り組みがなされていますが、明確な医学的エビデンスはありません」
▽内田宗志(うちだ・そうし) 1966年10月9日生まれ。福岡県北九州市出身。92年産業医科大卒業後、関東労災病院、02年トロント大学博士研究員などを経て現職。日本体育協会公認スポーツドクター、日本整形外科学会専門医。関節鏡視下手術の専門医として知られる。