原前監督とはまるで逆 巨人には“動かない”由伸采配が正解
1-0の七回無死二塁で打席に亀井という場面でも、犠打も考えられるケースで打たせて三邪飛。結果は走者を進められなかったものの、指揮官は「バントは全く考えなかった」とキッパリ。要するに、注目の初陣でほとんど何もしなかったのだ。
98年に横浜を38年ぶりの日本一に導いた権藤監督(現野球評論家)は当時の主砲のローズに「このチームは誰が監督をやっても勝てる。ただし、その監督が何もしなければね」と言われたという。「あれはオレに対する最大の褒め言葉。実際にプレーするのは選手。その選手を信じ、余計なことを言わず、余計なことをやらないように努めた。黙って見ていることの方が苦しく、つらいもの。その難しさをローズが理解し、代弁してくれた」とは権藤氏だが、原前監督は対照的だった。
「チームが機能しない時は、ベンチ主導で選手を動かしていく。決断、勇気がないとダメなんだ」 口癖のようにそう言っては、クリーンアップだろうが4番だろうが、送りバントのサインを出した。4番から9番に急降下するなど、打順は日替わりが当たり前。「打てないんだからベンチが動かさないと」と正当化したものだが、選手との信頼関係は薄れていった。高橋監督は就任以来、「打順はある程度は固定したい。その方が役割がはっきりするから」と話している。経験豊富な選手が揃い、原前監督のやり方に疲弊していた今の巨人には「由伸流」が合いそうだ。今季は前評判が低いが、高橋監督がこのまま選手を信用、信頼し続けられれば、巨人は案外、強いかもしれない。