よぎるメークドラマ 今の巨人は再現不可能これだけの理由
96年は当時の長嶋茂雄監督が選手を“洗脳”した。広島との差が日に日に開いても、ミーティングで「まだ大丈夫。絶対に追いつける」と鼓舞。根拠を示すことはないのだが、「8月になれば必ず一波乱ある」「9月にひとヤマくるぞ」と選手に言い続けた。
当時、ルーキーながら1番打者として活躍した評論家の仁志敏久氏は、「長嶋監督のプラス思考に選手が暗示をかけられた。長嶋監督だから、チームは勢いに乗り、それが止まらなかった」と振り返っている。
チーム関係者が言う。
「由伸監督にはそういう芸当はできないと思う。言葉も闘志も表に出さないタイプ。ミーティングをやっても、大きな声を出して選手の気持ちに訴えるのは村田ヘッドコーチの役目です。長嶋監督のように先頭に立って盛り上げたり、原監督のように目を見開いてクサイことを言ったり、そういう柄ではない。いい悪いではなく、性格だから仕方がないことです」
監督が目立てばいいってもんではないが、諦めムードの漂うチームの士気を上げるひとつの方法ではあるだろう。今季の巨人は3連敗が2度、5連敗と7連敗が1度ずつある。チームに活気がなく、黒星が続くのは、あるいは、監督の性格も影響しているのではないか。
96年は7月6日に自力優勝の可能性が消滅し、70試合を消化した時点で首位の広島に11.5ゲームの大差をつけられた。それに比べればまだ逆転の確率は高いが、今季の巨人には残念ながら「メークドラマ」の再現はまったく見えてこない。