千代の富士はスパッと…「引き際の美学」はプロでは遺物か
プロ野球でも、2015年に引退した山本昌(元中日)は晩年、年2、3試合しか投げず、記録を更新するだけの選手になっていた。
阪神の金本前監督は現役晩年に右肩を故障。左翼からの送球は中継にすら届かず、遊撃の鳥谷が左翼までカバーするありさまだった。それでも連続出場記録にしがみつき、チームの足を引っ張り続けていた。
■尊重されてきた千代の富士型
昭和の時代はまだ「引き際の美学」があった。巨人の王貞治(現ソフトバンク球団会長)は80年に、30本塁打を記録しながら引退。「王貞治のバッティングができなくなった」との名言を残した。千代の富士も、「辞めるときはスパッと潔く辞めよう。ちんたら横綱を続けるなよ」という師匠の北の富士の言葉に影響されたといわれている。
そうした潔さはもはや過去の“遺物”なのか。
スポーツファンの矢口高雄氏(漫画家)はこう語る。
「日本人的には、衰えを認めて早めに身を引く、千代の富士型の方が古くから尊重されてきた。一方で、泥臭く現役にしがみつく姿が格好いいと見る向きもあります。ただ、あまりに高齢だったり、衰えが激しい選手はその限りではないでしょう。三浦カズさんには失礼かもしれませんが、最高齢出場記録を伸ばしたいという意図を感じてしまうのは残念です。山本昌もそうだったが、それはそれでおかしな話。いずれにせよ、引き際の美学というのは、もう時代に合わないのかもしれません」
かつては桜のように潔く散ることが美徳とされてきた時代もあったが、今は違う。政治家や官僚は汚職をウソで塗り固め、後は知らぬ顔。権力にしがみつき、死ぬまで離さない。日本人が日本人らしかった時代は、昭和で終わったのかもしれない。