著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

「スーパーボウルの100倍」が物語るメジャーリーグの地位

公開日: 更新日:

 いわゆる米国4大スポーツの中で最も高い人気を誇るのはNFLだ。しかし、日本ではアメリカンフットボールは知名度の低い競技であり、NFLの注目度も高くない。

 また、日本で高い人気を持つサッカーは、米国では普及の途上にある。そして、野球は日米でともに国技と位置付けられるほど普及している。

 そのため、ジョージ・ブッシュと小泉純一郎がキャッチボールを行ったように、これまで、日米の首脳は野球を活用して首脳間の親密さを示すことが多かった。

 通例に従えば、トランプは、大リーグのワールドシリーズを引き合いに出して天皇の即位の価値を尋ねても不思議ではなかったが、NFLを例に出した。

 これはトランプが「ゴルフ好き」を公言し、野球への思い入れが少ないことが影響している。

「秋の古典劇」の別名が与えられているように、1903年に始まったワールドシリーズは米国のスポーツ界において高い地位を占める。しかしながら、テレビの視聴率が40%を超えるスーパーボウルと比べると、その視聴率は10%台にとどまっていて、若年層を中心に野球への関心は陰りを見せている。

 その意味で、トランプがワールドシリーズではなくスーパーボウルを例に出したことは、現在の米国において野球や大リーグの置かれた立場の厳しさを我々に伝えているのである。

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