高野連“選手第一”は建前 センバツ中止裏に同調圧力とカネ
「健康、安全が第一」は建前
「選手の健康、安全が第一。これを最大限に重視した」
センバツを中止にした理由に関して、高野連の八田会長はこう言った。
しかし、本当に「選手の健康、安全が第一」なら、そもそも夏の大会も含めた過密日程こそ問題だろう。
春、夏の甲子園大会は阪神の本拠地の甲子園球場で行われる。プロ野球の日程に配慮しなければならないとはいえ、春は32校を13日間、夏は49校を16日間でふるいにかけなければならない。
春も夏も準々決勝と準決勝の翌日を休養日に充て、今大会からは1人の投手が1週間で500球までしか投げられない球数制限を設けた。延長十三回からタイブレーク制を採用するようにしたのも、選手の体調を危惧したからに他ならない。
とはいえ、その程度で選手の「健康や安全」が保証されるわけではもちろんない。昨年は連日40度を超す猛暑で熱中症患者が続出する中、炎天下の甲子園で短期間のトーナメントを行うことの是非が社会問題にまで発展した。複数投手制が常態化している選手層の厚い私立校はまだしも、公立校はそうもいかない。トーナメントを勝ち抜くにはエースが炎天下で孤軍奮闘するしかないのが実情だ。せめて夏の地方大会を沖縄や北海道のように早い時期から始めるべきではないか。
とてもじゃないが高野連が「選手の健康や安全を第一」に考えているとは思えないのだ。
■夢の舞台に立てなかった学校に「救済措置」なんて無理
中止で甲子園の土を踏めない32校は、出場回数にはカウントされるという。しかし、選手はそれで納得するのか。選抜大会は各地方大会の上位2、3校が地区大会に進み、そこである程度の成績を収めないと代表になれない。「都道府県の予選で優勝すれば出場できる夏の選手権大会より狭き門」と漏らす監督もいる。新型コロナウイルスの感染拡大で中止は仕方がないとしても、何か救済策を考えて欲しいというのが、選手はもちろん、指導者や学校の本音だろう。
すでにネット上では、選手たちに対する同情の声が多い。
理想は、夏の甲子園は地方大会を勝ち抜いた49校に今回の32校を加えた81校で開催することだが、日程を考えれば現実的ではない。
この日の会見で高野連の八田会長は「なんらかの形で甲子園に来ていただけたら、甲子園の土を踏めるように検討していきたいと考えている」と救済措置を検討していることを明らかにした。丸山大会会長も、「出場校の皆さんにしてあげられることが何か、出場校のご要望も聞きながら考えたい」と語ったが、誰もが納得できる案などあるわけがない。
結局は中止に泣いた選手たちは出場したという記録だけが残って終わりになる。