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岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

大学時代にキャプテン務めた日本代表は厚生課の仕事に不満

公開日: 更新日:

営業向きの性格

 三菱重工業に入社した際、継谷が配属された部署は社員寮などの施設を管理する厚生課だった。しかし、彼は気に入らなかった。大学時代は行動力と社交性を買われ、キャプテンを務めたという自負があった。日本代表の遠征や合宿から帰ってくるたびに、同僚や先輩に不満をぶつけた。

「厚生課の仕事なんか女にまかせればいい。俺は営業向きの性格なんだ。外回りの営業マンになりたい。サッカーをやってもたかだか10年だ。仕事は一生もんじゃないか」

 ときには上司に直訴。部署替えを懇願した。だが、練習に支障をきたすという理由で却下された。

 もちろん、会社の仕事には不満をこぼしても、三菱重工業や日本代表チームのメンバーとしてはプレーに集中した。東京オリンピックでは出場機会はなかったものの、鋭い勘を生かしてのパスワークには定評があり、同じ三菱重工業のFW杉山隆一を使いこなせる選手として玄人受けした。

 ところが、継谷は次のメキシコ大会まで十分プレーできると期待されながらも、68年1月に「自己都合」を理由に三菱重工業を退職。27歳の若さで選手生活から引退してしまう。なぜなら東京オリンピック後に配属された部署は、厚生課よりもさらに地味な内勤の会計課だったからだ。

「俺はやっぱり動き回る仕事が向いている。大企業の歯車になるなんて、まっぴらごめんだ……」

 友人にそう語った継谷昌三。三菱重工業を中途退職したことが、死への拍車をかける結果となる――。 (つづく)

▼つぎたに・しょうぞう 1940年、兵庫県生まれ。63年に関西学院大卒業後に三菱重工業入社。61年、63年、64年には日本代表のヨーロッパ遠征に選出された。64年東京五輪サッカー代表。

【連載】東京五輪への鎮魂歌 消えたオリンピアン

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