著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

3大会連続メダルに貢献 世界一の名セッターは底なしの酒豪

公開日: 更新日:

後頭部に目がある

 18歳で日本代表入り。20歳で64年東京オリンピック出場を果たした猫田は、当時から天才セッターといわれた。

「当時のセッターは、前にトスを上げるのが当たり前。ところが、猫田はバックトスを自由自在に上げる。私らは『あいつの後頭部には目がある』と言っていた。キャプテンの出町豊さん、それに若い猫田のツーセッターが機能し、それが銅メダル獲得につながった」

 こんなエピソードがある。ミュンヘンオリンピック開催1年前の71年、猫田は練習中に右腕を複雑骨折。監督の松平康隆は「もう金メダルは絶望的だ」と漏らすが、懸命のリハビリで復帰すると「金メダルはいただきだ!」。猫田の存在は絶大だったのだ。

 4位でメダルを逃したモントリオール大会後、猫田は現役選手を引退。所属していた専売広島(現JTサンダーズ)の監督に就任。亡くなるまで指揮官を務めるが、優勝できずにこう言った。

「わしにとっては、世界一よりも日本一のほうが難しいかもしれん」

 猫田勝敏が亡くなった24日後の83年9月28日、広島県立体育館で日本バレーボール協会葬が行われた。参列者は実に2000人に及んだ。

 昨年の1月、それぞれの墓前で両手を合わせた菅原貞敬。その思いは、天に召された恩師や仲間たちに届いたにちがいない――。

▽ねこだ・かつとし 1944年、広島県生まれ。崇徳高校卒業後に日本専売公社広島地方局(現日本たばこ産業広島支店)入社。64年東京五輪からモントリオール大会まで4大会連続出場し、「世界一の名セッター」と称される。

【連載】東京五輪への鎮魂歌 消えたオリンピアン

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊川怜の元夫は会社が業績悪化、株価低迷で離婚とダブルで手痛い状況に…資産は400億円もない?

  2. 2

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  3. 3

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  4. 4

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  5. 5

    斎藤元彦知事ヤバい体質また露呈! SNS戦略めぐる公選法違反「釈明の墓穴」…PR会社タダ働きでも消えない買収疑惑

  1. 6

    渡辺裕之さんにふりかかった「老年性うつ」の正体…死因への影響が報じられる

  2. 7

    水卜ちゃんも神田愛花も、小室瑛莉子も…情報番組MC女子アナ次々ダウンの複雑事情

  3. 8

    《小久保、阿部は納得できるのか》DeNA三浦監督の初受賞で球界最高栄誉「正力賞」に疑問噴出

  4. 9

    菊川怜は資産400億円経営者と7年で離婚…女優が成功者の「トロフィーワイフ」を演じきれない理由 夫婦問題評論家が解説

  5. 10

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”