現役引退した阪神藤川は打たれる姿も絵になる投手だった
■ウッズに決勝アーチ被弾
その一方で、球児といえば苦い記憶も多い。08年の北京五輪準決勝の韓国戦で浴びた同点打、09年のWBCでの不振、それによって準決勝と決勝のクローザーをダルビッシュ有に譲るかたちになったこと。
また、現監督の矢野燿大の引退試合として予定された10年の横浜(現DeNA)戦で村田修一に逆転ホームランを打たれ、矢野の出場がなくなってしまったことも印象深い。
00年代に何度も熾烈な優勝争いを演じた中日戦では、敵の4番・ウッズに痛い場面で火の玉ストレートを打ち返されたこともあった。特に08年のCSファーストステージ第3戦でウッズに打たれた決勝ホームランは一番の思い出かもしれない。阪神のCS敗退を決める被弾だったが、その年で勇退する当時の岡田彰布監督は「球児で終われて良かった」と言った。
球児は打たれる姿も絵になる投手だった。鬼気迫る形相で投げ込む火の玉ストレートが時として木っ端みじんに粉砕されたとしても、周囲の誰もが納得できるところ。その姿に漂う絶対的クローザーとしての悲壮感。それこそが彼をレジェンドたらしめたのだ。