「肘なんてついて食べるなよ!」僕の右肘を内側からパチンと払うと真顔で言った
「肘なんてついて食べるなよ!」
しつけの厳しいご両親のもとで育った新庄さん同様、僕の両親も行儀には口うるさい方だった。大人になってからも箸、フォーク、ナイフの持ち方など、テーブルマナーには気を付けていたつもりでも、疲労と気の緩みもあって、無意識のうちについてしまった肘を、新庄さんは見逃さなかった。選手である新庄さんの方が、僕なんかの何倍も疲れていただろうに。
当時、僕は29歳。新庄さんの通訳を務めた2年間で初めて怒られたのは、あろうことか食事中のマナーだった。
会見では日本ハム時代に同僚だった森本稀哲氏(現野球解説者)の野球に対する姿勢、プライベートを改めさせたことが技術の上達につながった話をしていたが、今、振り返ると、メジャーでプレーしていた当時から、私生活を大事にしないとプレーにも悪影響を及ぼすと肝に銘じていたのだと思う。
■「OK、OK、年下ね」
コンビを組む前年の01年まで横浜(現DeNA)の通訳、広報業務に携わっていた僕は、新庄さんは明るい、だけどチャラい選手という先入観を持っていた。しかし素顔の新庄さんは、いつどんな時も、周囲にこまやかな気遣いができる素晴らしい先輩だった。