スノボ男子ハーフパイプ平野歩夢「怒りを原動力」に金メダルの深層 専門家が徹底分析
■「2本目の得点は妥当」
2002年ソルトレークシティー五輪女子ハーフパイプ日本代表の橋本通代氏は「私は国内でジャッジをしているので、その目線で見ていましたが……」と、こう続ける。
「あの得点はむしろ妥当だと思います。ランディング(着地)する場所やエアの高さなどが、予選の時と比べてもバラけていたので、減点されたのではないでしょうか。そうした細かい部分もジャッジはチェックするので、大技だけでは点数は伸びにくいのです」
それでも平野は冒頭の言葉通り、怒りを原動力に3本目に挑戦。エアで5.5メートルの高さを跳び、96点で逆転1位を果たした。橋本氏も「なぜ4点減点されたのかわからないくらい」と絶賛する演技で、日本に同競技初の金メダルをもたらした。
平野は昨年の東京五輪にはスケートボード代表選手として出場。予選落ちとはいえ、この「二刀流」こそが平野の強みだ。
前出の橋本氏が言う。
「スケートボードはスノーボードと違って足元が固定されていないので、安定感が取りづらい。さらに雪とコンクリートという違いもあるので、落ちた時の衝撃にも差があります。平野選手は幼少期は有名なキッズスケーターでしたからね。そこで培われたバランス感覚が雪の上でも生きているのでしょう。普通、スノーボーダーは夏でも自分の競技の練習をします。平野選手は東京五輪に出場するために、スノーボードの練習自体は減ったはず。それでもスケートボードの練習のおかげか、安定感が落ちるどころか、以前よりも増している印象です」
競技後はスノボ界のレジェンド、4位のショーン・ホワイトとハグし、健闘を称え合った平野。14年ソチ銀、18年平昌銀と頂点を逃し続けてきた男が、三度目の正直を手にした。