オカダ阪神の勝因は投手力だけにあらず! 落合博満氏も絶賛“神采配”支える「三種の神器」
「予見力」「戦術力」「大局観」を養う
まずは将棋。岡田監督の将棋好きは有名で、時間に余裕がある時は現在も藤井聡太7冠のタイトル戦などをネット観戦する。
小学生の頃から駒を握り、腕前は日本将棋連盟から認定されたアマチュア3段。10年ほど前には「今度、4段に挑戦するよ」と意欲を見せたこともあったが、岡田監督にとって将棋は脳トレの一環でもある。当時、こう話していた。
「将棋は常に相手がどう打ってくるのかを考えないとな。それも何手も先、何通りもの手を予想せなあかん。こういうのは野球にも通じるんよ。相手ベンチがどう出てくるかを読まないと、こっちの作戦を決めることもできんからな」
対局した関係者によると、棋風は基本に忠実な守りの将棋。いわゆる「受け」が非常に強いという。まさにセ界を席巻しているオカダ野球そのものだ。
そして麻雀。岡田監督は選手時代、同僚ナインやチーム関係者とよく卓を囲んでいた。あるシーズンの遠征先ホテルのチーム娯楽室。岡田監督は小林繁、川藤幸三らと麻雀を打ち、気分転換を図っていた。その対局を背後から観戦したことがある。当時はマスコミ陣も球団の身内扱い、入室可能な時代だった。
将棋と同様、岡田監督はここでも守りが堅い。リーチした相手にツモアガリされたら仕方がないが、自分からはほとんど当たり牌を振り込まない。かといって、ベタ降りはしない。物騒な牌を引いてきたと直感したらテンパイを崩しつつ、その危険牌を生き返らせて追いかけリーチ。まんまと逆転ロンをものにする回し打ちは、お見事の一語。守りで耐え抜き、最後は笑うオカダ野球と同じだ。
最後はトランプ。後楽園球場に近い東京遠征中の宿舎ホテルだった。昼間は喫茶となるバーの大テーブルで、4~5人のマスコミ陣が遊んでいた。その輪の中に、岡田監督が「1時間だけ入れてよ」とやって来た。
ルールはドボンやページワンを改造したようなものだったが、岡田監督の打ち筋はやはり強固。ある時、私の打ち札を見て勝負師の目つきになった。私の上手のXが残り1枚。私は自分の手札を減らすことを考えて場のマークを替えたところ、Xはアガリ。全員の持ち札の点数を総取りするX。すると岡田監督がこう指摘した。
「替えたらアカンやん。予見できなかったら仕方ないけど、Xの手札マークはミエミエやんか。マークを替えず、Xにカードを引かせて長期戦に持ち込むんよ」
なるほど、オカダ野球の大局観がここにある。
ネットゲームではない。生身の人間と対決する勝負ゲームで駆け引きを鍛えた岡田監督。オリックス・中嶋監督、ソフトバンク・藤本監督は覚悟した方がいいかもよ。
(長浜喜一/スポーツライター)