川合俊一らと男子バレー“御三家”だった井上謙さんは「発達障害の息子のおかげで学んだ」
井上さん、謙虚だ。
「仕事は具体的には、就職を希望する障害者のいる学校や支援機関を訪問したり、障害者本人と面談したり。自分の息子に障害があるので、彼と接するなかで学んだことが役に立っています」
1994年、出身の長野県岡谷工業高校のバレー部の監督夫妻の紹介で、1歳年下の元新体操選手と結婚。29歳の一人息子は広汎性発達障害があるのだという。
「息子の障害は重く、こちらの話は多少理解できますが、意思表示は苦手です。息子が1歳の頃、医者から発達障害の可能性を指摘されたときは大きなショックを受け、『成長すれば普通の人と同じになるんじゃないか』と、受け入れられるまでに何年もかかりました。でも、息子のおかげで僕自身が多くを学び、バレーの指導にも役立ったと思います」
どういうことか。
「たとえば、普通ならできて当たり前のことも、自分の子はできない。だから、ちょっとできたらこちらもうれしいし、認めてあげる。そして、できるまで待ってあげる。良いところを見てあげる。バレーの指導も同じなんです。息子のおかげで自分自身が変わったからこそ、監督業が務まったのだと思います」