【殺人事件報道】人が人を殺める――。この究極の行為の底に横たわる人生の不可思議と社会への批判を見よ。
「殺人犯との対話」小野一光著
「戦場から風俗まで」を掲げて数々のルポをものしてきたフリーライターの著者。本書は取材で知った10人の殺人犯に獄中で面会し、関係者にも取材した記録。
11年前、福岡で暴力団組長が家族ぐるみで起こした殺人事件では次男に徹底取材し、敵視と罵倒を浴びながらも次第にその人間性に迫っていく。取り調べの刑事たちに歯向かいながら最後に涙を流して自白したこと、最高裁で死刑が確定した後の著者との最後の面会。対話を通して人間性を深く掘り下げる独自のスタイルが、冷酷な殺人者の凶暴さと人懐こさの不思議な共存を生き生きと描き出す。(文藝春秋 1450円+税)