「人みな眠りて」カート・ヴォネガット著、大森望訳
「スローターハウス5」「猫のゆりかご」など、数々の名作を残した現代アメリカ文学を代表する作家ヴォネガット。彼の没後に刊行された短編集の本邦初訳。
表題作はクリスマスストーリー。クリスマスだけでなく、政府や婚姻や愛国主義などへの敬意を欠いてはいるが、10年間も新聞社で社会部長を務める40代半ばの辣腕部長がクリスマス野外イルミネーションコンテストのベスト20を町中を回って選んでくるはめに。
そして、最後に訪ねた家で優勝間違いなしの驚愕のイルミネーションに出合ったが、飾られていたイエスやマリアの石膏像が盗まれるという事件が起こり、意外な展開に……。
ほかに「ジェニー」「消えろ、束の間のろうそく」など、いずれも若きヴォネガットの才気がほとばしる珠玉の16短編を収録する。(河出書房新社 2000円+税)