「ポスドク!」高殿円著
名門大学出身で34歳の瓶子(へいし)は、本来なら国立大の講師として順風満帆の地位を得ているはずだった。しかし、学内派閥を読み間違え、今は女子大の非常勤講師として、月11万円足らずの収入で何とか暮らしている。
2年前から姉が育児放棄した甥・誉を養育する瓶子は、少しでも収入を増やしたいと、退職した講師が受け持っていた科目を来期、担当できるよう狙っていた。しかし、同僚から教授の九鬼が弟子にその授業を持たせようと画策していることを教えられ焦る。
ポスドク=ポスト・ドクターとは、博士号取得後、まだ常勤の職がない研究者のこと。そんな象牙の塔の最下層が繰り広げる出世競争を描いたお仕事小説。(新潮社 670円+税)