体と心に効く食事本
「食べてうつぬけ」奥平智之著、マンガ・いしいまき
“健康の基本は正しい食生活から”ということは誰もが知るところだが、栄養素の機能や正しい食事の取り方を学ぶことで、体の健康はもとより心の不調にも役立つことが分かってきた。今回は、うつ状態の改善に役立つ栄養素から、がんと闘う野菜スープ、そしてアスリートの食事法まで、体と心に効く食事が分かる5冊を紹介しよう。
正しい食事と栄養摂取は、体の不調ばかりでなく心の不調にも効果を発揮する。言い換えれば、食生活が乱れているとイライラや不眠、そしてうつの症状まで招きかねないということだ。本書は食事から心の不調回復をはかる方法を現役の精神科医が説いた本。
脳の中ではさまざまな神経伝達物質が働き、心を落ち着かせたり、やる気を出させたりしている。例えば、うつ状態や不安を和らげてくれるのがセロトニンで、ハッピーホルモンとも呼ばれている。その原料となるのが、鉄やビタミンB6だ。また、セロトニンとマグネシウムが原料となって作られるのが、良質の睡眠に役立つメラトニン。これらの栄養素が不足していると、いつまでたっても気分の落ち込みが改善されず、不眠も続くことになる。
また、疲れやすい、やる気が出ないという人は、鉄とマグネシウム、そしてビタミンB群を取るよう心がけるといい。これらは、細胞の中でエネルギーを生成するミトコンドリアの機能を高めることにつながる。ミトコンドリアが元気になれば、活力がみなぎり心の元気にもつながるはずだ。(主婦の友社 1300円+税)
「最強の野菜スープ」前田浩著
長年にわたり抗がん剤の研究・開発に従事してきた著者が教える、がん予防に役立つ野菜スープのレシピ集。
がんをはじめとする多くの疾患に関わっているのが、活性酸素だ。紫外線や化学物質、たばこに食品添加物など、あらゆるものから発生し、細胞を攻撃する。この活性酸素を除去する働きを持つのが抗酸化物質であり、その宝庫が各種の野菜。たっぷりと取るにはスープ、それもポタージュにして食べるのが効率がいい。季節ごとに旬の野菜を取り入れて作るのがお勧めだ。
冬はタマネギやニンジン、そしてブロッコリーを芯まで入れたスープがいい。すべての材料をオリーブオイルで炒めたら、水を入れて30分間煮る。粗熱を取ったら、ミキサーで撹拌して出来上がりだ。味付けしなくても野菜のうま味成分で十分においしく食べられるが、物足りない場合には少量の醤油、あるいは味噌、カレー粉、岩塩などでバリエーションをつけてもいい。
高血圧や糖尿病、白内障など活性酸素が影響するその他の疾患予防も期待できるため、毎日の食事に取り入れてみては。(マキノ出版 1300円+税)
「長友佑都の食事革命」長友佑都著
セリエAの超名門サッカークラブ、インテル・ミラノの中心選手として活躍した長友選手。しかし、2015年まではケガに悩まされ、いざというときに集中力を発揮できないなどメンタル面にも不安を抱えていたという。
そんな状況を打破するために取り組んだのが、食事を根本から見直すこと。すると、花粉症の症状の改善から疲労回復のスピードアップ、集中力の高まり、そしてケガをしにくくなるなど、効果はわずか2~3カ月で表れ始めたという。
本書では、「白い砂糖を断つ」「1食につき10種類以上の野菜を取る」「油はオメガ3脂肪酸が豊富なものを選ぶ」など、長友選手が取り組んできた食事革命に対し、管理栄養士のコメントも掲載。毎朝飲んでいる果物と野菜のスムージー、間食に取り入れているダークチョコレート、1日1杯の赤ワインなど、楽しみながら体質を整える工夫も紹介されている。
ビジネスマンにも、ここぞというときに結果を出したいときがある。アスリートの食事革命を取り入れて、仕事の成功を掴みたい。(マガジンハウス 1400円+税)
「マンガでわかるはじめての和食薬膳」武鈴子著
薬膳というと特殊な食材が必要な難しい料理と思われがちだが、そんなことはない。身近にある旬の食材をたっぷりと使った献立を整えれば、季節ごとに起こりやすい疾患や体調不良の予防につながる、立派な薬膳になる。
冬の厳しい寒さは五臓の中の「腎」を弱らせ、気力や体力を低下させて風邪などの症状が出やすくなるといわれている。つまり、冬の薬膳には腎の機能を高める食材が有効で、ナトリウムやマグネシウムが豊富な昆布やシジミ、海苔にヒジキなどの黒い食材がお勧め。また、塩分をしっかり取ると腎の活性化にも役立つため、冬は必要以上に減塩をしない方がいいという。もちろん、取りすぎは良くないため、ゴボウにレンコン、カブなど、多すぎる塩分の排出に役立つ、食物繊維が豊富な冬の根菜もたっぷりと食べるといい。
本書では、症状別に役立つ薬膳も紹介。胃痛を和らげるキャベツのポトフ、冷え対策にショウガのつくだ煮、慢性的な頭痛に焼きネギのレモン酢味噌など、手軽に作れる薬膳レシピが満載だ。(家の光協会 1300円+税)
「図解 食べても食べても太らない法」菊池真由子著
28年間で1万人以上のダイエットをサポートしてきた管理栄養士が、食べたいものを我慢せずに痩せる技術を伝授する。
酒を飲んだ後のシメのラーメンのウマさは格別だが、ダイエットにはもっての外というのが常識だろう。
しかし、酒のつまみに枝豆を2人分食べ、翌朝に和食の朝食を取るならシメのラーメンもOKだ。枝豆にはビタミンB1とB2が豊富で、これがラーメンの炭水化物と脂肪を強力に分解してくれる。そして翌朝の朝食で野菜の漬物やワカメの味噌汁を取ることで、食物繊維が前夜の余分なコレステロールをからめとり、体外へ追い出してくれるというわけだ。
ざるそばと天ぷらそばならダイエット中は前者を選ぶが、これは大きな間違い。具が多い方が摂取できる栄養素が増えるだけでなく、消化に時間がかかり、結果として間食の防止につながる。痩せたい人ほど、焼き肉屋の石焼きビビンバや中華料理屋の五目ラーメンなど具が多いメニューをしっかりと食べるべき。大切なのは量より質を見直すことだと心得よう。(三笠書房 630円+税)