言葉の力を借りて心を軽くする本特集
「『自分に生まれてよかった』と思えるようになる本」藤野智哉著
長引くコロナ禍、先の見えない経済状況など複数の不安要因にさらされている今、なんだか気持ちが沈みがちという人はいないだろうか。そこで今回は、心を軽くする本を5冊ご紹介。読書という名の言葉のマッサージを受けて、いつのまにか硬くなった心を解きほぐしてみよう。
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ストレス社会に生きるなかで、知らず知らずのうちに人と自分を比べて劣等感を持ったり、悲観的になったりしてしまうことはないだろうか。本書は、生きづらさを感じるこうした人に向けて、幸せな自分になる26のルールと7つの習慣を具体的に伝授する。
たとえばルール6「自分のことは自分で守る」では、自分を大切にできるのは自分以外にはいないことを自覚して、なんとかなるとつぶやきつつ、自分で選択しない限り自分への信頼感は育たないことを知る必要性を指摘する。うつっぽいと感じているのに会社や同僚に申し訳ないと思って会社を休めなかったり、自分は大したものではないと自分を全く認められなかったりしたら、このルールを熟読してみよう。自分を大事に生きるためのヒントが得られるはずだ。
(幻冬舎 1430円)
「精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方」精神科医Tomy著
地元の文具メーカーに勤めていた山田美春が、相談室に現れるところから物語は始まる。職場からも期待され、入社3年目で思いがけない大役を任された直後、以前抱いていた医師になりたいという夢が再燃。退職して医学部受験することを尊敬していた上司に伝えたところ、「がっかりした」と言われてショックで眠れなくなったというのだ。Tomyは美春にある言葉を贈るのだが……。(「期待」)
「1秒で不安が吹き飛ぶ言葉」などの大人気シリーズを著した精神科医Tomyによる初めての小説本。悩みの解決法を、「期待」「不安」「選択」「好意」「悪意」「女王」「迷い」「決意」の8つの物語で描く。物語にはそれぞれ、悩みに対処する言葉と、自身の経験を踏まえた解説がついており、悩める読者に寄り添ってくれる。
(ダイヤモンド社 1430円)
「もっと、自分をいたわっていい」香山リカ著
新型コロナウイルス感染症の大流行は、私たちの生活を根本的に変えた。健康被害や経済的な影響はもちろん、楽しみが激減して自分で思うより疲れている人も多い。本書は、こうした状況下で自分をいたわることの大切さを説いたエッセー本。
「コロナのストレスに負けないために」の章では、カナダの生理学者ハンス・セリエの論文を紹介。
人はストレス下に置かれると初めは危機対応のためにテンションが上がるものの、長期化すると「疲憊期」と呼ばれる状況に陥ってホルモンの調整や内臓の働きがおかしくなったり、脳の一部が萎縮してうつ病になったりしやすいというのだ。
本書では、疲れたらペースを落としてゆっくりすることや、この時間を心の栄養をためる時間として使うことなどを勧めている。
(新日本出版社 1650円)
「折れない心をつくるいい言葉」斎藤茂太著 柏耕一編
モタさんの名前で親しまれていた精神科医・斎藤茂太氏が亡くなって15年。本書は、モタさんが古今東西の名言を読んだらどう感じるかと考えた編集者が、過去25年にわたるモタさんへの取材テープから名言に合致する名言を拾って構成した異色本だ。
「心に火をつける言葉」「気持ちの切り替えができる言葉」「不運を幸運に変える言葉」「明日の希望につながる言葉」「しんどいときに読む言葉」「人間関係が楽になる言葉」の6章構成で、国内外の人の名言とモタさんのアドバイスが収録されている。「ろくな晩じゃねぇや。寝ちまえ、寝ちまえ。寝て起きりゃ別の日だ」(杉浦日向子)や、「美しい景色を探すな。景色の中に美しいものを見つけるんだ」(ゴッホ)など、なるほどと思わせる言葉との遭遇が楽しい
(さくら舎 1650円)
「哲学的人生相談」鷲田小彌太著
哲学は、人生相談とは無縁といわれるが、孔子の論語は人生相談的な側面を持っていた。本書は、哲学者である著者のもとに持ち込まれた人生相談に即答、回答、解答の3つの側面からズバリ答える鷲田版「論語」。さまざまな問題を哲学的に切っていく。
「一から話さないと気が済まない妻」に悩む会社員に対しては、「我慢して上の空でもいいから聞いて。そのうち上の空がばれて一部始終形式がやみます」と即答。回答編では、妻はそのうち大事なことしか、大事なことも結論しか話さなくなり、さらには結論も話さなくなることや、事が起きた後に聞かされて話を聞かなかったあなたのせいにされても覚悟があるかと問い詰め、解答編では夫婦の対話の重要性を説く。
突き詰めるほどユーモラスになる展開に笑ってしまうかも。
(言視舎 1760円)