「過剰可視化社会」與那覇潤著
日本のコロナ禍を長期化させ、危機を深刻化させた背景には、2010年代以降に本格化した「過剰可視化社会」の弊害があると著者は言う。親しい関係でもない人の「政治的な意見や信条」や「抱えている病気や障害」など個人の内奥に秘匿されてきたはずの情報が、SNSのプロフィル欄でわかってしまう。コロナ禍ではマスクを着け「見えるように」防疫への協力を表さなければ社会から排除され、そうした風潮に誰もが違和感を持たないという事態が続いた。可視化に慣れ過ぎた私たちは、「見せる」ことに伴う副作用の存在を忘れ、「見えない」ものが持つ価値を感じ取れなくなっていると指摘する。
こうした「過剰可視化社会」に至った背景を読み解き、その問題点と対策を提示する社会論。
(PHP研究所 1056円)